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動画用の文章、決定稿に近づいて来た。

最初に動画にするのは、いわゆる、解答編の核の部分だけにしておく。
こんな、他所で聞いた事無いオリジナルな解釈、果たして何人着いて来てくれるか。
完全版をアップするには、最初の動画で考察の大前提の部分が受け入れられるかを確認してからかな。
マリアージュ・ソルシエールとジェシヒナの関係も、正しく理解されるかわからないし。

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 ハンドルネーム”ドラノール”により投下された”ドラノール文書”。
 それは、かつて六軒島事件が起こる何年も前からブラックジャーナリストの黒木という男が、反右代宮金蔵派閥に雇われて週刊誌に右代宮家のスキャンダルをリークしていたという情報だった。
 そのスキャンダルには明らかな捏造も含まれており、@事件1年前に蔵臼氏の出した大損失も、彼らの人脈の人間が蔵臼氏を陥れるために仕組まれた詐欺であるということも添えられていた。
\
「”事件前が起こる何年も前から”ってのがポイントだな。 つまり、六軒島事件が起きたから、それまでの右代宮家の都合の悪い真実がバレたのではなく……。」
「事件が起きて右代宮に疑いの目が向いたせいで、誰かの捏造した嘘のスキャンダルが、”真実”として当然のように語られ始めた……。」
\
「六軒島事件において、本当の問題はやはり。」
「ああ、そうだ。 さっき俺たちがここで話していた考察とも合致する。」
\
「右代宮家を貶めて、得をする人間により、情報が歪められていた事。」
「要するに、俗にいう”偏向報道”の問題ということだよな……?」
\
 避難所板のウィッチハンターたちは、ドラノール文書の告発を拒絶せず受け入れてくれた。
 こんなにもオカルト陰謀論じみた、絶対に誰も信じないような”真実”を。
 何故なら、彼らも真実の歪曲により居場所を追われた者達だからだった。
\
 ここ、”ウィッチハンタースレ避難所”は、世間の”古戸ヱリカ文書”の解釈”朱志香犯人説”に懐疑的な者の集まりだった。
 そして、そのほとんどは、ゲロカス速報(通称ゲロ速)の偏向まとめにより大量に流入してきた”まとめ民”により、”ウィッチハンタースレ本スレ”を追い出された、”元、本スレ民”。
\
 彼らは、”古戸ヱリカ”文書に対して、ゲロ速がまとめたまとめ記事の、”ウィッチハンター達が朱志香犯人説で盛り上がってる件WWW”とは、異なる解釈を持っていた者たちだった。
\
 本スレには、元々は”古戸ヱリカ文書”に対して多様な解釈や考察があった。
 しかし、ゲロ速がスレ内の、ある特定の立ち位置の意見だけを恣意的に抽出し、まるで本スレ全体が、全員同じ意見であるかのように主張し始めてから、おかしくなった。
\
 「お前、魔女を庇うつもりか? さては魔女に買収されたんだろ?」
 「いや、俺はただ、古戸ヱリカ文書の第二章の解釈が必ずしも、金蔵による近親相姦じゃないって言ってるだけで……。」
\
 ”古戸ヱリカ文書”の文中に書かれていたのは、魔女伝説という幻想を通じての、祖父と孫娘のスキンシップ。
 それだけの話なのに。
 どうして、近親相姦説以外の解釈をしただけで、魔女に買収されたことになるのか。
\
 彼らは、ゲロ速を鵜呑みにし”魔女狩り”断罪に盛り上がる大勢の”新参者”から見れば、”排除されるべき異端”だった。
 だから、本スレから追放された。
 今、避難所板にいる彼らの方が、本来の本スレ住人だったにもかかわらず。
\
 「本人乙。」「自作自演痛すぎW。」
 「何で朱志香が多重人格じゃないって言っただけで、自作自演なんだよ!?」
\
 多重人格じゃなくても、普段と違う自分を作る事はできる。
 例えば、職場にいる時と、家にいる時。
 会社では管理職で、部下に『部長』という役職名つけて敬語で話しかけられ、それに対して上司として威厳をもって接する。
\
 『部長』という仮面をつけて、職場のみんなが期待する『部長』として振舞うわけだ。
 例え、その『部長』が、家庭では奥さんの尻に敷かれて、ゴミ出しや風呂掃除要員だったとしても。
 休日、子供に「遊園地に連れてって」とせがまれながらも、面倒くさそうにソファーに寝そべってプロ野球観戦するグータラ親父だったとしても。
 職場では、頼れるリーダーとして活躍していたはずなのに、『部長』という仮面を外せばまるで別人。
\
 「ベアトリーチェってのはな、こうも解釈できるんだぞ!」
 そう、頑張って説明をしたものの反応は芳しくなかった。
\
 「話を逸らすな」「殺人犯と一般家庭を一緒にするな」
 「魔女を名乗った殺人犯が、わけわからん文章ボトルメールで流してるんだろ? 多重人格に決まってるだろうが!」
 「もしかして、お前も朱志香の人格の一人じゃないだろうな?」「絶対そうだ!」
\
 強い思い込みと一方的な決めつけによる”魔女狩り”の前では、どんな反論をしようとも、まず話すら聞いてもらえない。
 疑問を挟むことすら許せなくて。会話が成り立たなくて。
\
 気が付けば、真面目な考察や議論をしたい人間は本スレから追いやられ、いつしかみんな外部掲示板に集まっていた。
 この避難所はそんな成り立ちでできたコミュニティだった。
 彼らは元々右代宮に攻撃的ではない人たち。 そして、今回の件でゲロ速というブログやそこの住人の持つ欺瞞に薄々感づいていた。
 だからこそ、世間の主流と相反する”右代宮は悪ではなく、むしろ被害者である”という意見が、他所よりも受け入れやすい土壌があったのだ。
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\
「右代宮家の、特に蔵臼氏は、事件前から常日頃のように風評被害を受けていたのか。
 なるほど、それでか! 色々な事業に、一番真っ先に目を付けて置きながら毎回、事業が頓挫して撤退していた理由は。」
「ドラノール文書に、『蔵臼氏の事業計画と、スキャンダルの起きたタイミング』について細かい時系列の表が載ってるけどさ。
 これ鵜呑みにすると蔵臼氏が何かしようとしたタイミングで、毎回わけのわからない怪情報が『週刊虚実』にスクープされてたって事になるな。」
\
「ガートルードってコテハンが週刊虚実の右代宮関係記事のスキャン画像上げてるから見てみ。」
「少なくとも、週刊虚実の報道内容に関してはドラノール文書の通りだって、よくわかる。」
\
「グルメランド計画を潰した記事についての記述が、気持ち悪いな。
 蔵臼氏が、食品分野で実績がある秀吉氏と組んで、共同でグルメランドを立ち上げようとした矢先に、『週刊虚実』で”蔵臼氏による、秀吉氏の会社の乗っ取り計画”みたいなデマが流れて、そのせいで計画はオジャン。」
\
「共同事業で右代宮同士に組まれると、反右代宮の人間にとっては都合が悪い。
 だから、捏造記事で仲違いさせて、それを潰した。」
「絵羽氏が蔵臼コンプレックス持ってるのを利用したんだろうな。
 ただでさえ、『兄と違って私は女だから不当な扱いを受けている』みたいな被害妄想持ってる奴が、『兄が夫の会社を乗っ取ろうとしている』って話を聞いて、仲良くできるわけが無いからな。」
\
「六軒島事件の動機は、右代宮家の資金不足だって話を聞いたことあるけど、その資金不足の原因が『反右代宮金蔵派閥』『黒木』『週刊虚実』の三者が仕組んだ捏造スキャンダルのせいだっていうのなら、気味が悪いな。
 『週刊虚実』は、自分の報道によって困窮して@破滅した相手を、事件の報道の時に更にバッシングしてた事にならねえか?
\
 『調子に乗って落ちぶれた貴族が、最後は金の取り合いで破滅したんだ~』みたいな、いかにも嫉妬深い負け組サラリーマンが好きそうな記事を、あいつら嬉しそうに特集してたぞ!
 もし、その落ちぶれた原因が自分達の偏向報道のせいだって事を、@自覚した上でやってたなら……。」
\
「待てよ、お前ら。
 何も、黒木や週刊虚実が直接右代宮の連中を殺したわけじゃないぜ。
 実際に事件が起きたのは、右代宮の人間同士が、実際に殺し合ってしまったからだ!
 他の誰でもない、右代宮の人間の肉体が、凶器を持って殺人を実行したんだ。
 チップを埋め込まれてリモコンで操られてでもいない限り、彼らが自発的に”殺人”を犯した事を、他の奴らのせいにはできないぜ。
\
「でも、動機は、こいつらの偏向報道だろ!?
 今までずっと不仲だと言われてきた長男一家と長女一家が、やっと歩み寄った事で始まった共同事業を、わざと両者を仲違いさせるようなスキャンダルで潰して……。
 お前、これ見てもそんなこと言えるのかよ?
\
 ただ、仕事の失敗でお金を失っただけじゃない。 親戚同士の仲違いの種まで植え付けられたんだぞ!
 何だよこれ。事件報道の時によく言われてた殺人動機の『資金不足』も、『一族間の不仲』も……。
 動機をほとんど全部、こいつらの悪行のせいだって事で説明できるじゃねえか!」
\
「同感だ。
 蔵臼氏と絵羽氏の対立を、わざわざ煽るような報道を、最も積極的にやってたのが、週刊虚実だからな。
 まるで、右代宮同士を潰し合いさせるためのリモコンだよな、あいつら。
 受信用のチップは、それまでの偏向報道で既に埋め込んである。 後は、あいつらがいつ、どのタイミングで起爆させるかってだけの話。」
\
 「情報操作で兄弟間の憎しみを煽って、信頼関係を壊して。 同じ口で事件後に今度は『身内同士、憎み合うなんて、右代宮の奴らって怖いよね!』ってふざけたノリで特集して……。
 本当に、人間なのかこいつら?
\
 完全に自分のせいだって自覚してるから、事件の動機を完全決め打ちで書いても外れないし、他の全週刊誌を出し抜いて、一番乗りの大スクープ!
 それも、右代宮バッシングだけにメチャクチャ偏った、バランス感覚全くなしのマイナー誌が。
 こんなの、真犯人が『私が右代宮を滅ぼした犯人でーす!』って、手を上げて告白してるようなもんじゃないか。」
\
「事件直後に、何も考えずにこいつらの意見に追従した他のマスコミも問題じゃないの?」
「まあ、仕方ない面もある。事件起きた時のシチュエーション最悪だったしな。
 消滅した六軒島。 一人だけ生還した右代宮絵羽。 こんな状況で、”最も右代宮に詳しい報道機関”の言葉を信じるなって言っても、そりゃ無理だ。 俺だって、そうだ。 この状況だと、誰だって右代宮を疑いの視線で見るだろうさ。
 スレのみんなだって、よく知らない又聞きの話を盲信してただろ?」
\
「こういう流れかもね?
 あの有名な右代宮家に、とんでもない大事件が起きた。 事件関係のスクープを取りたい。
 でも、自分たちは右代宮家の事をそれほど知らない。 とりあえず、事情を詳しそうな奴の言ってる事を信じよう。
 四六時中、『右代宮』『右代宮』ばかり叫んで貼りついてる、粘着質なあいつらなら右代宮関係の事情詳しいだろうし、ディープな真実いっぱい知ってるんじゃね?」
\
「なるほど。 偏向報道フィルターに気づかずに@ってわけか。
 まあ、でもこれ、俺も経験あるわ。 お前らだってあるだろ?
 あまり詳しくない物を調べる時。 例えば、中古のゲームショップで、見た事ないゲームソフトを買う場合、どうする?」
\
「レビューサイト見るわ。 そんで、評価が良ければ買う。悪けりゃ買わない。」
「濃い目の情報を信じるかな? 物知りの奴が細かいところまで事細かに書いてたら、とりあえずは信じるな。」
「もし、それらの情報に悪意の嘘が混じってたら?」
「あ。」「言われてみれば……。」
「今まで知らなかった物の情報なんて、それが嘘か本当かなんて、わかるわけないじゃない。」
\
「事件後、準備不足でどの雑誌も大して事情を把握できてない中で、唯一こいつらだけは既に、いつどんな事件が右代宮に起きてもいいようにスキャンダルの準備ができていた。
 事件前から右代宮家の内部事情ばかりをずっと前から”暴露”し続けていたから。
 ゴシップ雑誌は数あれど、1つの家族だけに粘着し続ける悪趣味は、『週刊虚実』と、そのバックの勢力だけ。
 だから、こいつらの言い分が唯一の真実としてまかり通ったわけか。」
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\
「しかし、ドラノールってコテハンの奴、よく時系列や人間関係をここまで詳しく調べ上げたよな。何者なんだ?
「そもそも、ブラックジャーナリストって、まさかそんなのが本当に存在するのか?」
\
「お前のスキャンダルを雑誌に載せるぞって脅して、金を強請り取る手口はどこかで聞いたことがあるよ。
 捏造のスキャンダルでも公表されてしまうと致命的だね。
 だって、身の潔白を証明するためには時間がかかる。かけられた嫌疑を打ち消すほどの説得力を持つ具体的な証拠を準備しなきゃいけないからね。
 それまでの長い時間でどれだけ、広く世間に悪い噂がばら撒かれるか、考えた事ある?」
\
「第一報を鵜呑みにして、速攻で失望して愛想をつかす奴だっている。
 仮に、後に身の潔白が証明されたとしても、一つのスキャンダルの情報を最後まで追いかける人がどれだけいるか。
 どんな弁解も、見てくれる人、聞いてくれる人がいないと意味が無いんだ。
\
 失望した相手の弁解を誰が真面目に聞く?
 一度壊れてしまった壺が、もう二度と元の形に戻らないように。
 そいつとの信頼関係は、もう二度と回復しないかもしれないんだ。」
\
「信頼関係さえ壊せれば、必ずしも真実である必要がないわけだな。」
「捏造でも、脅しに使える。商売は信頼を失ったらお終いだからね。」
「真実その物を塗り替える”黒き魔法”。そうか、エピソード4のあれって、黒木による風評被害を差してたのか。」
\
「泣き寝入りして金を出した挙句、おとなしく金出したはずなのに雑誌にスキャンダルが載る?
 なんだよそれ。最悪だな! んな事、何で許されるんだよ?」
\
「だって、誰かに助けを求めたい場合でも、相手に全ての事情を話したうえで、正しい事実関係を相手に信じてもらわなきゃいけない。
 つまり、少しでも他人には話しにくい秘密や不信感を持たれそうな材料を持っていたら……。
 誰にも助けを求められず、孤立させられる。」
「”魔女を否定する毒素”だっけ? 悪意の毒素の充満によって自分自身の存在その物が否定される環境では、真実すらも否定されて、幻想の霧のように消えていく。」
\
「捏造で一度酷く信用失わされた奴が、誰に信じてもらえるっていうんだよ?
 よっぽど、相手に愛されてでもいない限り……ん?
 ”愛が無ければ視えない”って、そういう事か。」
\
「お前ら、何であの物語の事まだ覚えてるんだよ?
 全く。 俺だけじゃなかったせいで、”世界を構成する最小単位”の2に、あっさり到達してしまったじゃないか。」
\
 この避難所は、広いネットの中では僻地と呼ぶべきマイナーなコミュニティだ。
 ここ一か所が、いかにどんな考察で盛り上がろうと、世間の意見は恐らくは覆る事は無い。
 か弱き真実のまま、埋もれていくだろう。
\
 でも、それでもこれは十分に奇跡と呼ぶに相応しい出来事だった。
 初めてだったから。六軒島事件以降、こうも右代宮に味方する意見が、ネットという誰でも見ようと思えば見れる場所に、こうもたくさん集まったのは。
 そんな避難所の様子を見ている、2つの影があった。
\
「こんな展開、初めてだ。 外の世界の人たちが、こんなに理解を示してくれるなんて。
 ウィルの言ってた『縁寿の真実の魔法』の話の通り、本当に世間の右代宮バッシングに疑問を持つ人たちが現れたよ。
 ねえウィル、これが奇跡なの?」
\
「バーカ。この程度じゃまだ奇跡じゃねェ。 俺の推理が正しければ、縁寿の真実の魔法の第二弾が炸裂する。
 もうすぐ……な」
\
「第二弾? それは、一体……!?」
「魔女を否定する毒素が弱まった時、魔女は存在する事が出来る。
 だったら、右代宮を否定する毒素が弱まった時、何が起きると思う?」
\
「右代宮を、否定しない人の意見が存在できるようになる……?」
「ああ、正解だ。
 さて、お前に1つ問題を出す。 さくたろう、シエスタのウサギたちのモデル知ってるか?」
\
「あれは真里亞の」
「いや、それ以外にもな、もう1つ意味を持ってるんだよ。ダブルミーイングってやつだ。
 ほら、わからねェか?
 シエスタ以外にも、4人組の奴らがいる事に。
\
 学校でいつも一緒の仲良し4人組。 でも、不幸が起きて一羽欠けてしまった。
 残された、三羽のウサギは今、何を思ってる?
 その失った一羽の真実が苦境に立たされてる中、何をしようとしている?」
\
「それ、もしかして……。サク、ヒナ、リン?」
 さくたろうは、思い出す。
 六軒島を巡る物語に、右代宮朱志香の親友として出てきていながら、ほとんど出番がなかった彼女たちの事を。
\
 もし、彼女たちがベアトリーチェの物語に、実は今までに何度も登場していたら・・・・・・!?
 もし、それが―――。
 シエスタの3人だったとしたら……!?
\
「もし、そんな事が起きたとしたなら、それこそ本当の奇跡だ。
 真里亞だって、縁寿を許してくれるよね?」
\
「ああ。
 だがな、あいつが『許す』『許さねえ』以前に、1つお仕置きする必要がある。
 『史上最悪のいじめっこの作り方』だっけか? たっぷり虐めて、虐め方を学習させてから力を与えると、最悪の虐めっ子が完成するって話。 前からあいつの持論だとは知っていたが、今回のはやりすぎだ。
\
 どこの世界に、ゲスな週刊誌の真似して、久々に会った生き別れの姪を攻撃する馬鹿がいるんだよ。
 いくら、縁寿の事を誤解して、『復讐のためにわざと酷い考察をばら撒いた奴』だと思っててもな……。
 『事件当日の錯乱した楼座が言い訳のために使った方便』を、無理やり正当化して霧江と留弗夫を悪人に仕立て上げて、報復に使うなんてのは、絶対にやっちゃいけない事なんだよ!
\
 他人にやられて、一度でも自分が嫌だと感じた事、「やめて!」って叫びたくなるような酷い事はな……。
 例えどんな理由があろうと、自分は絶対にやっちゃいけねえんだよ!
\
 縁寿の考察のせいで朱志香が死んだ? ふざけるな。いくら何でも死亡の定義を弄繰り回し過ぎだ。
 『変な話が世間に流れて、社会的に死んだ』事をわざと、まるで『自殺して肉体的に死亡した』かのようにわめいて縁寿を更に追いつめて……。
\
 どうして、ネットで起きたあの騒動で、縁寿が起こした事件で朱志香が叩かれて……。
 一番、追いつめられてたのが縁寿だって事に、@どうして、気づいてやれねェんだよ!?」
\
「え? その死亡についての定義だと……。 あれ? え? 死んでない? 生きてるの?」
「そもそも、あいつが今さら死んでどうするんだよ? かつて自分の仕掛けた『狂言殺人で共通の敵を作ってみんなに仲直りしてもらおうハッピーハロウィン作戦』のせいで、何もかもメチャクチャ。
\
 最初は、本当の敵の、黒木やブラックジャーナリスト一派の存在と、バラバラの右代宮家を嘆きながら孤独に死んだ右代宮金蔵の気持ちを家族みんなに伝えて……。
 右代宮家が家族一丸となって、助け合って、今直面するすべての困難に立ち向かうために、考えた作戦だったのに。
 裏目って誰にも真意気づいてもらえず、殺し合い起きて家族全員死んで。
 その後も、墓の中の家族が悪く言われるわ、絵羽犯人説で日本中盛り上がるわで何もかも裏目りまくりの大パニック!
\
 涙目でエピソード3を書き上げたのに、誰一人真意を理解せず。
 世間には絵羽犯人説を補強するお話だと、真逆に受け取られたりとエトセトラ。
 本当は、絵羽犯人説を否定するために作った話なのにな。
\
 んで、EP4以降でもでも似たような事の繰り返し。
 誰にも真意が理解されず、物語の記述の揚げ足を取ったような、右代宮への悪評ばかりが増えていった。
 こんなにも、何度も何度も、数えきれないほどの死にたくなる状況を惨めに生き抜いてきて来た奴なんだぜ!
 今更、この程度で命を投げ出すなんて馬鹿な真似……。
\
 するわけが無いだろうが!」
bgm1 515
\
「ドラノール君、なかなかの反応のようですね。
 この私が全人脈を総動員して、情報をかき集めたのも間違いじゃなかったという事か」
「教授サン、どうしてあなたはここまでやってくれるのデスか?」
「今、思い出したんだ。聞かせてあげようか? 私が心を入れ替えた本当の理由を。」
\
 教授は、ドラノールに話した。
 今まで、他人の真実の重みに気づかずに興味本位に近づいて、教授と言う無駄に重い肩書の持つ説得力も理解せず、右代宮バッシングを助長する片棒を担いでいた、愚かな自分自身の罪の事。
\
 真実というデリケートな物を扱いながら、適当な伝聞をろくな検証もないまま真に受けて拡散するのが、如何に怠惰な事なのか。
 教授と言う立派な立場の人間が、果たすべき役割から見ると、怠惰としか言いようが無かった。
 情報の拡散力や説得力がある立場だからこそ、どこの誰よりも強い責任感を持たなければいけなかったのに。
\
「そうだ。私は、怠惰な人間なんだ。
 あの時、ベルフェゴール君が言ったように。」
\
 そして、それに気づいたきっかけがいつなのか。
 何が切っ掛けで、どんな感情が芽生えたかを。
\
「あなたには愛想がつきました。子供たちと一緒に出ていきます!」
「ああ、いいさ。勝手にしろ! 女が一人で子供を養えると思うならな!」
\
 ほんの少しの綻びからの、仲違い。
 喧嘩の最中に、売り言葉に買い言葉みたいな流れで口にしてしまった、本当は思ってもいないような言葉。
\
 違うんだ。嘘だ。私はそんな事思ってない。望んでもいない。
 待ってくれ。行かないでくれ。 誤解だ。 私が悪かった。
 戻ってきてくれ。 私を許してくれ!
 本当は、愛している……。お前ら家族を、私は。 私は……。
\
 それまでは、家中に響いていた、はしゃぐ子供の明るい声。
 悪戯を叱る、母親の声。 言葉では息子を咎めながらも、心では『いい子に育って』と思っている、そんな愛のある声。
 話声あれだけ毎日騒がしかった家が、嘘のように静かになった。
\
 私の寝床の周りから、音が無くなった。
 たった一人、私だけが残された。
 そんな私に優しくしてくれるのは、部屋いっぱいに満たされた骨董品たちだけ。
\
 そうだ。 だから、私はあの時……。
 聞いたんだ、彼女の声を……!
\
「怠惰でしたね、あなたのご家族は。
 一家の大黒柱が、本気で家族を愛していない事なんて、あるはずないのに。
 そして、あなたも怠惰です。
 奥様に誤解されたのに対して、言い訳と言う名の弁解だけに終始して。
 それでは、奥様には『俺は悪くないんだ』と見苦しく言い逃れしているだけにしか聞こえない。
\
 本当の気持ち、どうして言わなかったんですか。
 言えば、わかってくれないはずなんてなかったのに。
 どうして、何もしようとしないんですか?
 今からでも、決して遅くはないはずなのに。」
\
 誰の声?
 そうだ。あの時私は、振り返ったんだ。
 声のする方向へと。
 そこには……。
\
「ダメですよ。
 まだ『愛してる』んでしょ? だったら、ちゃんと、『愛してる』って口にして言わないと。
 それをしないで、いくら理解されない事を愚痴っても、それはただの怠惰です。」
\
 ”い”たんだ。
 
 煉獄の七姉妹の一人、怠惰のベルフェゴールが。
\
 その時だった。
 私は、重なったんだ。
 そう、全てが。
 私と同じで、一人きりの書斎で骨董品に囲まれていた、孤独な老錬金術師と。
\
「嫁も息子も、私を理解してはくれん。
 表面だけ、どう取り繕おうとも、私の事が嫌いなのだろう。
 私を癒してくれるのは、ベアトリーチェだけだ。
\
 わかっている。
 ベアトリーチェの伝説なんて全部嘘だ。
 確かに存在するのは、@たった一通の手紙と、添えられていた僅かなお金だけ。
\
 多分、どこかの貧しい娘が、なけなしの金をどうにか、かき集めて。
 全部合わせてやっと、あれだけという。 ちっぽけな、はした金。
 でも、大事なのは金額の大小ではないのだ……。
\
 周りの神輿に載せられて、借金だらけで潰れかけの右代宮を継がされて。
 事業になかなか成功せず、負債は増える一方で。
 そんな、明日すら見えぬ暗雲の中での事だ。
\
 私のもとに、一通の手紙が届いたのだ。
『お困りでしょう。 少ないですが、受け取ってください。
 少しでもあなたのお役に立てるなら幸いです。
 私が込めた黄金の魔法が、あなたに莫大な黄金をもたらす事を、心からお祈り申し上げます。
 黄金の魔女ベアトリーチェより』
\
 あの時は、負債地獄の出口の見えない迷宮の中で、本当にもがき苦しんでいた。
 誰も助けてくれず、ただ途方に暮れるしかなかった。
 本当に、どん底だった。
 そんな中で、彼女だけは私に助けの手を差し伸べてくれたのだ。
\
 彼女がくれた”救い”が、私にとってどれだけ大きな力になったか。
 私が、こうして島1つ買い取って、主として君臨できるようになったのも、全ては彼女の”黄金の魔法”のおかげだ。
 確かに、彼女の包んだお金の額は少なかったさ。
\
 でも、彼女のくれた”救い”によって、元気を取り戻した私が、その後努力に努力を重ねて、やっとの事で手にしたのは、莫大な黄金だった! ベアトリーチェの、黄金の魔法が本物だったから、右代宮家は完全に立ち直ったのだ。 
 せめて、ベアトリーチェにもう一度会いたい。
 会って一言、お礼が言いたい。『ありがとう』って。」
\
 ドラノールは、教授の話を、瞬きもせずに聞き入っていた。
 まるで、本物の右代宮金蔵が、教授の身に憑依して語り掛けるような、そんな話ばかりだったから。
\
BGM witch in gold(出題編の曲)
ロノウェ「ベアトリーチェ様の衣裳部屋に忍び込んでどういうつもりですかな?」
朱志香「祖父さま見てると、なんか、鏡に映った私を見ているみたいでほっとけないんだ。普段意地張って虚勢張って強い振りして本当は弱くて、いなくなった奴の事ばかり考えて、ひとりぼっちで。」

ロノウェ「ほう。つまり、ベアトリーチェの代わりになってあげたいと? そのために衣裳を盗んで変装したいというわけですか。」
朱志香「い、いや。そういうわけじゃなくて。えっと……。あ~、ダメだ。言い訳しようとしたけど、全然思いつかねえ。私やっぱ馬鹿だ~。」
BGM Sun(未使用曲)
ロノウェの許可もらって、変装して金蔵部屋に突撃するも?
ロノウェ「ぷっくっく。どうです。上手くいきましたか?」
朱志香「『ふざけんな』って酷い剣幕で怒鳴られた。お前如きがベアトを名乗るとは何事かって。薄々わかってたけどね。誰だって美しい思い出をパチモノで汚されたくはない……か。」

朱志香「私だって、いくら戦人がいなくなって寂しいからって、代わりに似たような変な髪形のスネオヘアーの男に『俺を戦人だと思ってくれ』なんて言われたら、ぶっ殺したくなるよ。空気読まずに、ノリノリでヘンテコな変装してドヤ顔で生き恥晒して、轟沈して。あ~っ、なんかもう穴掘って死にたい~~っ。」

ロノウェ「まぁ確かに、あのお美しいベアトリーチェの代わりがお嬢様のような乳臭い小娘というのは、お館様的には許せんでしょうな。何しろ気品の欠片もありませんからな。」
朱志香「ケンカ売ってる?」
ロノウェ「いえいえ。滅相もありません。考えようによってはその若さが、お館様を落とす武器になります。」

ここに、クッキー焼くシーン

朱志香「クッキー焼くのがこんなに大変だなんて思わなかった……。まさか上手く焼けるまで付きっきりのスパルタだもんな。」
ロノウェが言うには、「お嬢様のような乳臭い小娘だからこそ、一生懸命さが武器になる」らしく、「お菓子も作れないような不器用なお嬢様が一生懸命作った事自体が大事」。味の美味い不味いは問題ないらしいけど、不安な朱志香。

朱志香「そういえば、戦人にも焼いたこと無かったな。いつも他の子が戦人にクッキー焼いて渡すのを、私はただ見ているだけで。紗音が焼いたクッキーを戦人が食べるのが何となく悔しくて、思わず横取りして全部食べたら、戦人には紗音を巡る恋のライバルと謎の誤解されるし、紗音も照れて赤くなるし。」

朱志香「ああ、駄目だ。クッキー渡す前から失敗した時の事ばかり考えてどうすんだよ。ああも、うっざいなあっ! 今悩んだって、結果変わんないだろ?だったらもう、当たって砕けろだ!」
金蔵部屋に再チャレンジする朱志香。
金蔵「朱志香よ。焦げた物を食べさせて私をガンで殺すつもりか?」
失敗
BGM worldend オルゴール版(出題編曲)
一生懸命作ったクッキーを突き返される朱志香。
その一部始終を見ていた熊沢は、金蔵の行為を許せなかった。「確かにクッキーは焦げていて出来が悪いですよ。でも、お嬢様がどんな思いであなたにクッキーを焼いてくれたのか、本当にわからないんですか? お嬢様の指の絆創膏見えませんでしたか?」

金蔵「要はクッキー程度も満足に焼けないという事だろう。焦がすわ指を怪我するわ。夏妃の教育はなっておらんという事だ。」
熊沢「どうして、そんなに大人げない事を仰るのですか? まさか思い出を汚されたのを怒ってるのですか?」
金蔵「貴様に何がわかる?最愛の人を失った男の悲しみの何が!」
熊沢「どうして、ご自分の孫娘の愛なのに。どうして、理解してあげようとも、しないのですか!」
BGM rain(EP7曲)

熊沢には、金蔵の意固地の理由がわかっていた。
金蔵は、文通相手のベアトリーチェの正体を、落下死した使用人だと思い込んでいる。だから、死人復活のためのオカルトなんかに嵌った。
熊沢には誤解だとわかっていた。何故ならそのペンネーム「ベアトリーチェ」は熊沢本人の物だからだ。

以前ベアトリーチェを名乗って文通していた熊沢が、金蔵に返事を返さなくなった理由。それは、金蔵には自分ではなく、家族の事をちゃんと見て、考えて欲しかったから。 熊沢は、金蔵本人の前に現れる事ができない「手紙の中だけの魔女」。そんな物にうつつを抜かし、奥様との関係を悪化した金蔵。

奥様との関係悪化が、彼の子供たちに与えた影響は大きい。絵羽様が女ながらに、男の真似事ばかりしたのは寂しかったから。父親に自分の事を見てほしい。愛してほしい。女の自分のままだと愛されないと思い込んでる。楼座様が、自殺した使用人を本当の母親だと思い込み、自分を魔女の子だと言ったのも。

BGM fall (EP7曲)

冷え切った夫婦関係。 日に日に刺々しくなる奥様。そんな奥様を自分の母親だと思えなくなった楼座様が、毎日何をしていたと思います?
落下死した使用人がいた場所に、毎日のようにフラフラ出かけて、今日もママに会えたよ嬉しいよって、1人で呟いていた楼座様が不憫で不憫で仕方なくて

そんな中、自分の存在が右代宮に与える悪影響を悟った熊沢は、金蔵に返事を返さなくなった。
でも、最後に手紙出したのが、使用人の落下死事件が起きる前なのがまずかった。何故なら、”使用人が落下死したから”手紙が返ってこなくなった=死んだ使用人こそがベアトリーチェだと金蔵が誤解したから。

相手が死んだ使用人だからこそ、ベアトリーチェに囚われ続ける。『亡くなった人相手恋の争いをしても勝てない』との言葉通りに。 あの時、私が犯した罪の重さから逃げ出して、田舎に帰ったのも不味かった。数年後気になって右代宮に戻った頃には手遅れで、今の病んだ金蔵になっていたのだから。

ベアトリーチェが生きていると手紙を返したほうがまだマシだったかもしれない。 でも、それだとグダグダと、あの関係を続けてしまう事になっていた。それどころか、金蔵に正体を明かすように迫られていたかもしれない。それが嫌だから、熊沢は逃げたのだ。
金蔵を更に束縛してしまう事にも気づかずに

熊沢は自分の罪を理解していた。
だからこそ過去に縛られて家族を顧みない金蔵が許せなかった。祖父を慰めるために必死の孫娘の気持ちに気づかないなんて。ベアトリーチェが孫娘の朱志香お嬢様なら、その方がいい。彼の愛は死者ではなく生者に家族に向けられるべき。孫を愛せない祖父がどこにいる?

BGM 古時計(未使用曲)

熊沢の説教を受けた後、自室の机に置かれたクッキーと、しばらくにらめっこをする金蔵。彼は悩んでいた。自分が朱志香のクッキーを本当に受け取ってもいいのか? それがベアトリーチェへの裏切りにはならないのかと、何度も自分に問いかける。この世に一人しかいない最愛の人、代わりなんていない!

でも、熊沢の言葉も気になる。
「この世に、ここまであなたの事を思ってくれる孫娘は……。朱志香お嬢様は、この世に一人しかいないのですよ!」
恐る恐る、クッキーに手を伸ばす金蔵。迷いから、その手は震えていた。
口に入れた瞬間、広がるのはほろ苦い味。
報われない片思いのような味。

金蔵「全く。私を早死にさせるつもりか。」
そう呟いた瞬間、自分の中の矛盾に気づく金蔵。
死のうと思っていた人間が、あの世でベアトリーチェに会おうとしておきながら死ぬのが怖いとは何だ? 笑わせる。
金蔵「次からは、火力と焼く時間を減らすように言わんとな」
ロノ「ほう?次も欲しいと」

突然現れたロノウェに、大慌ての金蔵。
金蔵「うわあああ! き、貴様。いつからそこにいた?」
ロノウェ「ノックはしたつもりなのですが、クッキーとにらめっこに夢中のお館様のお耳には届かなかったようですな。ぷっくっくwww。」
金蔵「勘違いするな。私は奴をベアトだと認めたわけではない」

金蔵「ただ、右代宮の当主ともあろうこの私が、孫娘が必死になってクッキーを焼いた気持ちも理解できんような無能である事など決してありえ無いというだけだ! 熊沢の奴に伝えておけ! 私は過ぎた事を女々しく愚痴るだけのくだらない男ではないと。しっかり教え込むのだぞ。わかったな!」

部屋から退出後ロノウェ「素直じゃないところは、そっくりですよね。お嬢様と血がつながってる証拠といいますか。
隔世遺伝ってあるものですね。 プーックックック!」
熊沢「私は、最低な女ですよね。こんな事で罪滅ぼしをしたつもりになって。
 でも、せっかくお嬢様が自ら決めて祖父に近づいた好機。
 こうでもしないと、あの人。死ぬまでずっと、一人ぼっちな気がして」
\



 色々な人のために普段とは違う自分を演じた。
 例えば、ベアトリーチェは一人ぼっちで寂しい金蔵のために。
 魔女を本気で心から信じる、ちっちゃい真里亞のために。
 何もできない自分だけど、せめて彼らが求める魔女として、彼らの傍に”存在”してあげたい。
 それっていけないこと?
\
 理御は、理想の跡継ぎを求める両親のため。
 学校のあだ名の”ジェシ”だって、学校のみんなのため。
 せめて誰かの役にたつために、自分に仮面をつけて頑張るのはいけない事?
\
 頭が悪くてダメな私でも、理御という理想の自分像を持って頑張れば、いつかは両親に認めてもらえる。
 「譲治君に比べて、どうしてあなたは」って、呆れられなくて済む私にも、いつかなれるかな?
\
 でも、そうやって頑張ってたからか、学校でクラスの奴らが勝手に色々頼りにしてくるわけよ。
 親を見返すためにつけてた仮面を見て、それで勝手に”ジェシって凄いんだ”とか思ったんだろうな。
 おかげで、勝手についた”頼れる姉御キャラ”なんて物を守らなくちゃいけなくなって、無茶苦茶しんどいったら、ありゃしない。
 本当は、私なんて何もできないダメな子なのに。
 どうして、ずっと背伸びし続けなきゃいけないの?って。
\
 でも、ジェシはそれで本当にクラスの子の期待に応えられてるんだから、凄いじゃない。
 例え仮面でも、そこまで来れば立派にジェシの一部じゃない。
 それに引き換え私なんて、サクみたいに手先が器用じゃないし要領よくない。
 リンに比べると、成績も悪いし……ああ、自己嫌悪。
\
 ねえジェシ。
 どうして、そんな他人に言えないような、ディープな悩みを話してくれるの?
 私みたいな、何のとりえもないダメな子に。
\
 だってさ、ヒナは話を真面目に聞いてくれるから……。
 後、誰かに勝手に誰かに言いふらしたりしない。
 前に、口の軽いサクに、ちょっと戦人の事を話したせいで、それからしばらく三角関係ネタで弄られ続けたのには参ったよ。
 サクも悪い奴じゃないんだけどね。
 明るくてノリが軽いから、一緒に遊んでて楽しいタイプだし。
 でも、真面目に悩みを話す相手には、どう考えても向いてないかな。
\
 ヒナは、ダメな子なんかじゃないよ。
 要領が悪いってのはね、『誠実』って事でもあるの。
 目の前の出来事を軽く受け流せなくて、馬鹿正直にクソ真面目に対応しようとするから、そりゃ損する事は多いよ。
 でも、そういう子ってさ。 絶対に、ズルい事は考えないだろなって@安心感があるじゃない。
 だから、他の子に言えないような事だって、打ち明けられる。
 紗音といい、ヒナと言い、私どうも、どんくさそうな子と相性がいいのかね? たはは。
\
 私、こんな事を言われたの初めて。
 ごめん、ほめられ慣れてないもんだから焦っちゃって。
 なるほど。そっかぁ。 真里亞ちゃんにも、いつもそういう言葉をかけてあげてるんだね。
 だって、ジェシは『不器用』な子だから。
\
 自分の本当の欲求をストレートに表現するのが苦手で、いつも他の誰かの事情ばかりに振り回されてばかり。
 いつも自分自身を抑えて、『誰かのための私』ばかりを演じて。
 もっとワガママに生きても許されるはずなのに。
\
 この世界の誰かに、誰でもいいから抑え込んでる本当の自分を、見破って理解して欲しい。
 普段から、そんな気持ちを抱えてる『不器用』な子だからこそ、他の誰かが同じ悩みを抱えてる時に、理解してあげる事が出来る
 『本当の私』。『真実の私』を、見抜いてあげる事ができるのね!
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オリスク動画化する部分の文章と改ページ記号

 ハンドルネーム”ドラノール”により投下された”ドラノール文書”。
 それは、かつて六軒島事件が起こる何年も前からブラックジャーナリストの黒木という男が、反右代宮金蔵派閥に雇われて週刊誌に右代宮家のスキャンダルをリークしていたという情報だった。
 そのスキャンダルには明らかな捏造も含まれており、@事件1年前に蔵臼氏の出した大損失も、彼らの人脈の人間が蔵臼氏を陥れるために仕組まれた詐欺であるということも添えられていた。
\
「”事件前から”ってのがポイントだな。 つまり、六軒島事件が起きたから右代宮家の都合の悪い真実がバレたのではなく……。」「事件が起きて右代宮に疑いの目が向いたせいで、誰かの捏造した嘘のスキャンダルが、”真実”として当然のように語られ始めた……。」
\
「右代宮家の、特に蔵臼氏は、事件前から風評被害を受けていた。
 それでか。色々な事業に、一番真っ先に目を付けて置きながら毎回、事業が頓挫して撤退していた理由は。」
「ドラノール文書に、『蔵臼氏の事業計画と、スキャンダルのタイミング』について細かい時系列の表が載ってるけどさ。
 蔵臼氏が何かしようとしたタイミングで、毎回わけのわからない怪情報が『週刊虚実』にスクープされてたって事になるな。」
\
「事件の動機で、右代宮家の資金不足が殺人事件の原因だって話を聞いたことあるけど、その資金不足の原因が『反右代宮金蔵派閥』『黒木』『週刊虚実』の三者が仕組んだ捏造スキャンダルなら、気味が悪いな。
 『週刊虚実』は、自分の報道によって困窮して破滅した相手を、六軒島事件の報道の時に更にバッシングしてた事にならねえか?
 『調子に乗って落ちぶれた貴族が、最後は金の取り合いで破滅したんだ~』って、あいつら嬉しそうに特集してたぞ!
 もし、その落ちぶれた原因が自分達の偏向報道のせいだって事を自覚した上でやってたなら……。」
\
「実際に事件が起きたのは、右代宮の人間同士が、実際に殺し合ってしまったからだ。
 右代宮の人間の肉体が、凶器を持って殺人を実行したのだ。
 チップを埋め込まれてリモコンで操られてでもいない限り、彼らが自発的に”殺人”を犯した事を他の奴らのせいにはできない。
 だけど……。」
\
「お前の言いたいことは分かる。
 蔵臼氏と絵羽氏の対立を、わざわざ煽る報道を最も積極的にやってたのが、週刊虚実だからな。
 まるで、右代宮同士を殺し合いさせるためのリモコンじゃん、あいつら。」
\
 「情報操作で信頼関係を壊して、兄弟間の憎しみを煽った張本人の奴らが、『身内同士、憎み合うなんて、右代宮の奴らって怖いよね!』ってふざけたノリで事件後に報道してるのは、気持ち悪いよ。
 完全に自分のせいだって自覚してるから、事件の動機を決め打ちで書いて、他の週刊誌を出し抜いて真っ先にスクープが取れるんだ。
 こんなの”報道”とも”ジャーナリズム”とも呼びたくないよ。
 しかし、ドラノールってコテハンの奴、よく時系列と人間関係調べ上げたよな。何者なんだ?」
\
「しかし、ブラックジャーナリストって、まさかそんなのが本当に存在するのか?」
「スキャンダルを雑誌に載せるぞって脅して金を強請り取る手口はどこかで聞いたことがあるよ。
 捏造のスキャンダルでも公表されてしまうと致命的だね。
 だって、身の潔白を証明するためには時間がかかる。かけられた嫌疑を打ち消すほどの説得力を持つ具体的な証拠を準備しなきゃいけないからね。
 それまでの間に、どれだけ広く世間に悪い噂がばら撒かれるか、考えた事ある?」
\
 「仮に、後に身の潔白が証明されたとしても、一つのスキャンダルの情報を最後まで追いかける人がどれだけいるか。
 どんな弁解も、見てくれる人、聞いてくれる人がいないと意味が無いんだ。
 第一報を鵜呑みにして速攻で失望して愛想つかす奴だっている。失望した相手の弁解を誰が真面目に聞く?
 一度壊れてしまった壺が、もう二度と元の形に戻らないように。
 そいつとの信頼関係は、もう二度と回復しないかもしれないんだ。」
\
 「信頼関係さえ壊せれば、必ずしも真実である必要がないわけだな。」
 「捏造でも、脅しに使える。商売は信頼を失ったらお終いだからね。」
 「真実その物を塗り替える”黒き魔法”。そうか、エピソード4のあれって、黒木による風評被害を差してたのか。」
\
 「泣き寝入りして金を出した挙句、おとなしく金出したはずなのに雑誌にスキャンダルが載る?
 なんだよそれ。最悪だな! んな事、何で許されるんだよ?」
\
 「だって、誰かに助けを求めたい場合でも、相手に全ての事情を話したうえで、正しい事実関係を相手に信じてもらわなきゃいけない。
 つまり、少しでも他人には話しにくい秘密や不信感を持たれそうな材料を持っていたら……。
 誰にも助けを求められず、孤立させられる。」
 「”魔女を否定する毒素”だっけ? 悪意の毒素の充満によって自分自身の存在その物が否定される環境では、真実すらも否定されて、幻想の霧のように消えていく。」
\
 「捏造で一度酷く信用失わされた奴が、誰に信じてもらえるっていうんだよ?
 よっぽど、相手に愛されてでもいない限り……ん?
 ”愛が無ければ視えない”って、そういう事か。」
\
 避難所板のウィッチハンターたちは、ドラノール文書の告発を拒絶せず受け入れてくれた。
 何故ならは、彼らも真実の歪曲により居場所を追われた者達だからだった。
\
 ここ、”ウィッチハンタースレ避難所”は、世間の”古戸ヱリカ文書”の解釈に懐疑的な者の集まりである。
 そして、そのほとんどが、ゲロカス速報(通称ゲロ速)の偏向まとめにより大量に流入してきた”まとめ民”により、ウィッチハンター本スレを追い出された、”元、本スレ民”。
\
 彼らは、”古戸ヱリカ”文書に対して、ゲロ速がまとめたまとめ記事の、”ウィッチハンター達が朱志香犯人説で盛り上がってる件WWW”とは、異なる解釈を持っていた者たちだった。
 彼らは、ゲロ速を鵜呑みにし”魔女狩り”断罪に盛り上がる大勢の”新参者”から見れば、”排除されるべき異端”だった。
 だから、本スレから追放された。
 今、避難所板にいる彼らの方が、本来の本スレ住人だったにもかかわらず。
\
 「お前、魔女を庇うつもりか? さては魔女に買収されたんだろ?」
 「いや、俺はただ、古戸ヱリカ文書の第二章の解釈が必ずしも、金蔵による近親相姦じゃないって言ってるだけで……。」
\
 文中に書かれていたのは、魔女伝説という幻想を通じての、祖父と孫娘のスキンシップ。
 それだけの話なのに。
 どうして、近親相姦説以外の解釈をしただけで、魔女に買収されたことになるのか。
\
 「本人乙。」「自作自演痛すぎW。」
 「何で朱志香が多重人格じゃないって言っただけで、自作自演なんだよ!?」
 疑問を挟むことすら許せなくて。会話が成り立たなくて。
 気が付けば、真面目な考察や議論をしたい人間はみんな外部掲示板に集まっていた・
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 色々な人のために普段とは違う自分を演じた。
 例えば、ベアトリーチェは一人ぼっちで寂しい金蔵のために。
 魔女を本気で心から信じる、ちっちゃい真里亞のために。
 何もできない自分だけど、せめて彼らが求める魔女として、彼らの傍に”存在”してあげたい。
 それっていけないこと?
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 理御は、理想の跡継ぎを求める両親のため。
 学校のあだ名の”ジェシ”だって、学校のみんなのため。
 せめて誰かの役にたつために、自分に仮面をつけて頑張るのはいけない事?
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 頭が悪くてダメな私でも、理御という理想の自分像を持って頑張れば、いつかは両親に認めてもらえる。
 「譲治君に比べて、どうしてあなたは」って、呆れられなくて済む私にも、いつかなれるかな?
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 でも、そうやって頑張ってたからか、学校でクラスの奴らが勝手に色々頼りにしてくるわけよ。
 親を見返すためにつけてた仮面を見て、それで勝手に”ジェシって凄いんだ”とか思ったんだろうな。
 おかげで、勝手についた”頼れる姉御キャラ”なんて物を守らなくちゃいけなくなって、無茶苦茶しんどいったら、ありゃしない。
 本当は、私なんて何もできないダメな子なのに。
 どうして、ずっと背伸びし続けなきゃいけないの?って。
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 でも、それで本当にクラスの子の期待に応えられてるんだから、凄いじゃない。
 例え仮面でも、そこまで来れば立派にジェシの一部じゃない。
 それに引き換え私なんて、サクみたいに手先が器用じゃないし要領よくない。
 リンに比べると、成績も悪いし……ああ、自己嫌悪。
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 ねえジェシ。
 どうして、そんな他人に言えないような、ディープな悩みを話してくれるの?
 私みたいな、何のとりえもないダメな子に。
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 ヒナは話を真面目に聞いてくれるから……。
 後、誰かに勝手に誰かに言いふらしたりしない。
 前に、口の軽いサクに、ちょっと戦人の事を話したせいで、それからしばらく三角関係ネタで弄られ続けたのには参ったよ。
 サクも悪い奴じゃないんだけどね。
 明るくてノリが軽いから、一緒に遊んでて楽しいタイプだし。
 でも、真面目に悩みを話す相手には、どう考えても向いてないかな。
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 ヒナは、ダメな子なんかじゃないよ。
 要領が悪いってのはね、『誠実』って事でもあるの。
 目の前の出来事を軽く受け流せなくて、馬鹿正直にクソ真面目に対応しようとするから、そりゃ損する事は多いよ。
 でも、そういう子ってさ。 絶対に、ズルい事は考えないだろなって@安心感があるじゃない。
 だから、他の子に言えないような事だって、打ち明けられる。
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 私、こんな事を言われたの初めて。
 ごめん、ほめられ慣れてないもんだから焦っちゃって。
 なるほど。そっかぁ。 真里亞ちゃんにも、いつもそういう言葉をかけてあげてるんだね。
 だって、ジェシは『不器用』な子だから。
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 自分の本当の欲求をストレートに表現するのが苦手で、いつも他の誰かの事情ばかりに振り回されてばかり。
 いつも自分自身を抑えて、『誰かのための私』ばかりを演じて。
 もっとワガママに生きても許されるはずなのに。
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 この世界の誰かに、誰でもいいから抑え込んでる本当の自分を、見破って理解して欲しい。
 普段から、そんな気持ちを抱えてる『不器用』な子だからこそ、他の誰かが同じ悩みを抱えてる時に、理解してあげる事が出来る
 『本当の私』。『真実の私』を、見抜いてあげる事ができるのね!
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 4つめの章の解釈なんて、最初から『魔女が殺人事件の犯人で、メッセージボトルや偽書を真実の隠ぺい工作のために利用した』の一点張り。
 ベアトリーチェが直接殺人を犯したとは限らない事を突っ込めば、本人乙扱いされた。
\
 そもそもメッセージボトルや偽書をわざわざ流さなければ、事件は絵羽犯人説で確定するはずだった。
 古戸ヱリカ文書が指摘していた”物語の作者が朱志香であるヒント”なんて、わざわざ物語を書かなければ発生しないはずの物なのだ。
\
 それを指摘したら、修正案として「恋のライバルの紗音を貶めるために、絵羽犯人説から紗音犯人説に誘導した。」という答えが返ってきた。
 どうあっても、朱志香を『物語を証拠隠滅や、他者の濡れ衣』のために書く人間という事にしたいのだろう。
 最初から、彼らの求める一種類の真実で決めつけて、異論を絶対に認めようとしない。
 異論は全て、本人の自作自演か買収された者の意見として解決される。
 これでは、まるで魔女裁判だ。 
\
 彼らの求めているのは、真実を解き明かす事ではない。自分の求める真実で、世界を塗りつぶす事なのだ。
 つまり、彼らがしているのは推理ゲームではない。 陣取りゲームなのだ。
 最初から信じるべき”真実”は決まっていて、それ以外の異端を全て排除し塗りつぶす陣取りゲーム。
 黒い色をした1つの真実が、他の全ての色を塗りつぶして勢力を拡大する陣取りゲーム。
 ”真実の陣取りゲーム”。
\
 本スレは今、”右代宮に買収された奴ら”と”右代宮信者”を全て追放して、”冷静で公平で客観的な視点”で、右代宮家の人間の”真実”についての議論に盛り上がっている。
 ゲロ速のまとめ記事が、本スレの書き込みを平等に抽出した物なのかを、全く疑いもしないで。
\
 「ゲロ速がまとめた”嫌いな誰かを貶めるために文章を書く右代宮朱志香像”って、こうして見ると鏡に映ったゲロカス速報その物じゃねえか。」
 「なるほど。ゲロ速管理人がチェス盤をひっくり返して、”自分が朱志香ならどうするか”を考えた結果、知らず知らずのうちに自分の中の朱志香像が、鏡写しのもう1人の自分になったわけね。」
\

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タイトル:嘘にまみれたこの世界


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パンダ5

Author:パンダ5
笹の葉を食う頃に礼にようこそ!
現在、朱志香犯人説解を作成中。ベアト理御=朱志香=うみねこのなく頃に原作者、狂言殺人事件説とその動機は「マスゴミにバラバラにされた信頼関係」というラインで考えています。
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